医師事務作業補助者とは?
医師事務作業補助者は、多忙な医師に代わって事務書類を作成するのが主なお仕事です。
医師からの指示に従って書類作成、予約システム管理などを代行します。事務作業とはいえ、医療に関連するため資格の取得や研修の受講が求められるポジションです。
医師事務作業補助者は、2000年代の後半頃から医師の事務作業の負担軽減を目的として普及し始めました。
2008年度診療報酬改定で勤務医の負担軽減を目的に創設された「医師事務作業補助体制加算」により、「医師事務作業補助者」という名称の職員が誕生し、全国に急速に医師事務作業補助者の配置が拡大していきました。
日本医師事務作業補助者協会
医師事務作業補助者の特徴
「医師の業務」を代行すること
医師事務作業補助者は医療文書(詳細は後述)の発行など事務作業を行いますが、診療報酬の計算をはじめとした会計対応は行いません。
ここが医療事務との大きな違いです。ポイントは「医師の事務作業を補助・代行すること」にあります。
大きな病院での採用が積極的
医師の右腕となる業務であることから、多忙な医師の多い大学病院や総合病院での募集が多い傾向にあります。反対に、小規模な病院では募集をしていない可能性が高いです。
なお、医療事務は小さなクリニックや個人病院でも配置されています。
就職後に研修を受ける必要がある
医師事務作業補助者は採用後に32時間以上の研修を受ける必要があります。病院側が医師事務作業補助者を配置するために、厚生労働省の定めた32時間以上の研修を受けなければならないのです。
研修で学ぶ内容は下記の通りです。
医師事務作業補助者について調べると「研修」「32時間」というキーワードが一緒に表示されるのは、この研修が必要なためです。
また、病院での実務についても就職後にOJTサポートがあります。
専門的な知識が必要
診断書や処方箋などの医療文書を作成代行業務では、医療用語などの専門的な知識が必要です。医師の指示に従って作成するとはいえ、用語の意味を1つずつ医師に聞いたり調べたりして作成するのでは、効率が悪くなってしまいます。
医師事務作業補助者の資格試験の学習過程で、病名や症例などの用語も覚えていきましょう。志望する診療科目を定めておくと、知っておくべき病名や症例がクリアになり、学習を進めやすいですよ。
医師事務作業補助者はきつい?仕事内容は?
医療文書の作成
医師の作成する書類の作成代行は医師事務作業補助者の主な業務です。医師の指示や確認に従って診断書などを作成します。
作成を担当する書類の例を下記にまとめました。「医師が作成している書類」と聞いて思いつく書類と照らし合わせてみてください。
管理システムへの入力やデータの保管
電子データの管理・整理も医師事務作業補助者の業務です。電子カルテの入力やレントゲン画像の取り込み、救急外来の記録、行政対応に必要なシステム入力等を医師から依頼される場合があります。
医療文書の作成は多くの病院で必要な業務であるのに対し、データの管理・入力は病院の特性に応じて必要の有無が変わります。例えば、夜間・休日診療の中核を担う病院であれば救急外来に関するデータ入力が多くなると予測できます。
医師事務作業補助者ができないこと
一方で、医師事務作業補助者が行ってはいけない業務もあります。下記の作業は行わないようにしましょう。
病院に勤めていると、つい対応したくなる場面もあるかもしれませんが気を付けましょう。
処方箋や診断書の発行に慣れてきても、看護師や薬剤師の指示による書類作成はNGです。医療文書の作成代行は、医師からの指示があった場合に行います。
また、患者様の受付や医療保険関連の業務は、医療事務の担当者が行う業務です。
患者様への「看護」にあたる活動も厳禁です。採血や点滴等の処置は医師・看護師が行うべき医療行為に該当します。
医師事務作業補助者を目指す資格
医師事務作業補助者に関する資格
医師作業事務者を目指せる資格試験は複数あります。名称が類似しているので迷う方もいらっしゃるかと思いますが、大きな違いはありません。受験時期や受験方法を考慮して、受けやすい試験を選びましょう。
医師事務作業補助者を目指せる資格試験は次の通りで、本記事でご紹介するのは医師事務作業補助者実務能力認定試験(ドクターズオフィスワークアシスト®)です。
試験名 | 主催団体 | 受験資格 |
---|---|---|
医師事務作業補助者実務能力認定試験 (ドクターズオフィスワークアシスト®) | 全国医療福祉教育協会 | 誰でも受験可能 |
医師事務作業補助技能認定試験 (ドクターズクラーク®) | 日本医療教育財団 | 規定を満たす教育訓練または実務経験 もしくはその同等と認められる者 |
医療事務に関する資格
ここまで読んでみて、「医師事務作業補助者は難しそう…」と感じた方は、医療事務のお仕事をご検討ください。
医療事務は選択肢が豊富にあり、より自分の好みに合わせた資格や講座を選ぶことが可能です。クリニックでの勤務経験がない方には「医療事務検定(3級)」「メディカルクラーク」が取得しやすいのでおすすめです。
また、教育訓練給付金の対象になっている講座もあります。下記の関連記事で各種医療事務の資格や給付金について解説しています。
関連記事:医療事務講座の費用を比較紹介します!
関連記事:医療事務講座には教育訓練給付制度が使える?受給の条件や申請方法を解説します
医師事務作業補助者検定試験の概要
試験の日程と合格発表
医師事務作業補助者検定試験は年に3回行われます。試験月は6月・10月・3月ですので、受験しやすい季節を選べます。なお、合否の連絡は試験の翌月または翌々月です。
試験日 | 出願期間 | 合否発送日 |
---|---|---|
2022年6月19日(日) | 2022年4月1日(金) ~5月16日(月) | 2022年8月1日(月) |
2022年10月2日(日) | 2022年7月21日(木) ~9月1日(木) | 2022年11月15日(火) |
2023年3月19日(日) | 2023年1月6日(金) ~2月13日(月) | 2023年5月8日(月) |
難易度と合格率
試験問題の難度は高くはありません。中級程度のレベルです。しかし、医療文書作成の実技試験もありますので、参考書を読んだ程度で解ける問題でもありません。
医師事務作業補助者検定試験の合格率は「おおむね60%から80%」と公表されています。試験の合格ラインは正答率6割以上です。
受験の方法
試験の約1ヶ月前までに出願と受験料の振込が必要です。出願はインターネットと郵送で受け付けています。
試験の当日は在宅受験となります。同居する家族がいる方は事前に周知しておきましょう。
試験に関するその他の情報
試験時間は120分と長丁場ですが、参考書の持ち込み許可がありますので試験直前に詰め込み暗記で焦る必要はありません。事前に参考書に付箋を貼るなどして、情報を整理しておくと試験の際に役立ちます。
医師事務作業補助者検定試験の概要
項目 | 概要 |
---|---|
試験名 | 医師事務作業補助者検定試験の概要 |
主催団体 | 全国医療福祉教育協会 |
受験資格 | 特に無し |
試験日 | 2022年6月19日(日) 2022年10月2日(日) 2023年3月19日(日) |
試験の形式 | 学科問題(マークシート)20問 実技問題(各種書類作成)3問 ※個人受験の場合は在宅試験 |
試験時間 | 120分 |
試験内容 | 1.学科試験 医師事務作業補助者 医療関連法規 医療保険制度 ビジネス文書 医学・医薬品・臨床検査の知識 医療安全管理と個人情報の保護 診療記録と電子カルテシステム 文書作成 2.実技試験 SOAP形式の経過記録作成 各種文書作成(診断書、診療情報提供書、処方箋 等) |
合格基準 | 正答率6割以上が原則 ※問題の難易度等による調整の可能性あり |
合格率 | おおむね60%から80% |
医師事務作業補助者検定試験に合格するには
独学で勉強する
費用を抑えて資格を取りたい方に向いている勉強法です。市販の参考書を利用して試験範囲の学習を進めます。
うまくいけば、試験勉強に必要な費用が書籍代のみで済みます。講座の受講と比べて費用を抑えられる点が魅力的です。医師事務作業補助者の参考書は2000円程度で販売されているようです。
しかし、参考書や解説を読んで理解できない問題があった時に自力で解決しにくい点がデメリットです。
医師作業補助者の学習事項について解説したサイトは少ないのが現状ですので、ネット上で回答を見つけるには時間が掛かることになりそうです。
また、特に医師事務作業補助者は、診断書や処方箋を作成する試験の対策では「正解か不正解か」の判断は素人にはつきにくいものです。
試験勉強の際に「質問できる環境」を重視したい方は、以下で紹介する講座をご検討ください。
講座で効率よく勉強する
医師事務作業補助者の養成講座があるのをご存知でしょうか。講座の選択肢は多くありませんが、学習進捗管理、進路相談ができる点がメリットです。
また、講師に質問したり添削を受けたりできる環境が整っているので、実技試験対策での疑問や悩みもスムーズに解消できます。
講座名 | 提供スクール | 特徴 |
---|---|---|
医師事務作業補助者養成講座 | ソラスト | 最新の令和4年1月制度改定に準拠 |
医師事務作業補助者養成講座 | 日本医療事務協会 | 厚生労働省の定める研修を修めた修了証を交付 |
まとめ
医師事務作業補助者は医療事務とは異なり、医師の右腕として活躍するお仕事です。
その業務を適切にこなすためには医療の知識や診断書等の作成の基礎的なスキルは必須です。資格があると就職にも有利です。医師事務作業補助者検定試験の合格を目指し、テキストや講座の情報を集めることからてください。